新型コロナで一変　2020年のクレジットカード振り返り　2021年の展望

2020年は新型コロナウイルスの影響により、クレジットカード業界も大きく揺れた年となった。そこで、2020年・2021年のクレジットカード業界について考えたい。

プレミアム系カードの特典見直し - 海外特典から国内特典へ

まず、プラチナカード・ブラックカードなどのプレミアム系カードの特典はT&Eが基本となる。しかし、旅行関連の特典やグルメ特典などが利用できなくなり、年会費5万円を超えるようなカードの場合は、年会費を回収するのが非常に難しくなった。しばらくの間はプレミアム系カードの特典見直しが起きるだろう。

三井住友カードは、ポイントに特化したプラチナカード「三井住友カード プラチナプリファード」の発行を開始。従来のプラチナカードの特典を削り、その分をポイント還元に回した。新型コロナウイルス前から検討されていたカードのようだが、タイミング的にはピッタリのカードとなる。

同じくクレディセゾンは女性向けのクレジットカード「セゾンローズゴールド・アメリカン・エキスプレス・カード」を発行し、従来のゴールド特典である空港ラウンジや旅行傷害保険を特典から外した。ポイント特化ではなく、確実に利用できる特典が用意されているのが特徴だ。

ANAアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード、ANAアメリカン・エキスプレス・プレミアム・カード、ミライノ デビットPLATINUM（Mastercard）、ミライノ カードPLATINUM（JCB）ではニーズの高そうなスマートフォンの保険を開始。2021年1月にはアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード、2月にはミライノ カードGOLD（JCB）も対象となる。逆に海外旅行傷害保険などが自動付帯から利用付帯に変わるカードもあり、使えない（使わない）特典から日常で使う可能性の高い特典にシフトしてきている。

ダイナースクラブカードは2021年4月以降、海外特典を減らし国内特典の充実を図る。

2021年以降は、プレミアム系のカードでさらに大幅な特典の見直しが起きそうだ。

ポイント還元⇒付帯特典から付帯特典⇒ポイント還元に

クレジットカードは1.5％を超えるような超高還元率カードも複数存在した。還元率競争が一段落し、1％還元カードが基本となり、常時1％を超えるようなカードはほぼ無くなった。

新型コロナウイルスの影響の影響でプレミアム系カードを中心に特典が使えなくなってきており、再度ポイント還元を強化しているカードが増えている。

三井住友カードはスタンダードカード限定だがファミリーマート、ローソン、セブン-イレブン、マクドナルドで利用するとポイントが5倍（2.5％還元）。

セゾンパール・アメリカン・エキスプレス・カードでは、Apple Pay等に登録してQUICPay加盟店で利用すると3％還元だ。

特典としてポイント還元はわかりやすく、各社ポイント還元競争を行っていたが、体力が続かず超高還元率カードは終焉を迎えた。その後、伸びてきたのがプレミアム系カードとなる。年会費は高額だが付帯特典を活用すれば年会費は十分回収できるようなカードが増えてきた。しかし、新型コロナウイルスの影響でプレミアム系の高付帯カードが使えなくなり、再度高還元率カードの注目度が高くなっている。

クレジットカードの非接触決済が加速

東京五輪会場でVisaのタッチ決済が使えるようになる予定だが、新型コロナウイルスの影響で非接触決済に注目が集まった。

ぐるなびが2020年7月に発表した「キャッシュレスに関する調査レポート」では、コロナ前とコロナ後では現金に触れることに対しての抵抗感が倍になっている。

ぐるなびの「キャッシュレスに関する調査レポート」より（2020年07月01日発表）

Visaがマクロミルで2020年9月に調査した結果では、Visaのタッチ決済に対して「現金やカードを手渡さずに済むので、清潔」と回答している人が4割にのぼっており、新型コロナウイルスによりタッチ決済に注目が集まっていることがわかる。

Visaのタッチ決済について魅力的に感じること（2020年12月17日発表）

ダイナースクラブカードにもタッチ決済「ダイナースクラブ コンタクトレス」が搭載され、京都丹後鉄道ではVisaのタッチ決済での運賃支払いに対応するなど、2021年は東京五輪＋新型コロナウイルスの影響でタッチ決済が急速に伸びそうだ。

券面からカード番号が消える

カード表面からカード番号が消えたカードが増えた。従来、クレジットカードはカード情報を複写するためにエンボス加工となっていたが、現在ではエンボスの必要がなくなり、さらにカード番号自体も表面にある必要性がなくなってきている。

三井住友カードはデザインを大幅に見直し、カード表面からカード裏面にカード番号、有効期限を移動した。

ダイナースクラブカードもカード番号、名前、有効期限を裏面に移動するなど、表面には決済に必要ない情報は載せないのが主流となってきている。

クレディセゾンが発行した、SAISON CARD Digitalやセゾンパール・アメリカン・エキスプレス・カードDigitalはカード自体にカード番号がなく、カード番号を確認するにはアプリで確認する必要がある。

カード情報を裏面にする事で、決済時にカード情報が盗まれるリスクも減る。クレジットカードの不正利用も年々増加しており、この流れは今後も続くだろう。

2021年はタッチ決済の普及、一般カードでは非接触＋高還元カード、プレミアム系カードでは国内特典やオンライン特典の追加などに注目だ。