共通ポイントの相互送客も変化
2023年春ごろに「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」が誕生する。名称は変わる可能性はあるとの事だが、どのような仕組みなのか、これまでのポイントプログラムなどとどう違うのかを紹介したい。
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2003年に誕生した共通ポイント「Tポイント」は、それまでの加盟店での囲い込みから、加盟店同士での相互送客が目的だった。
その後、2010年にPontaポイントが誕生。TポイントとPontaポイントはそれぞれ排他契約となっていたため、TポイントとPontaポイントのどっちかを利用者が選べることはなかった。
2014年に楽天ポイントカード、2015年にdポイントカードの誕生となり、マルチポイントを採用。これまで排他契約が基本だった共通ポイントは、利用者側がためるポイントを選ぶことができるようになってきている。
また、楽天ポイントとdポイントの誕生により、共通ポイントの相互送客の仕組みが変わる。楽天ポイントカードやdポイントカードは、相互送客というよりは、他で大量に発行したポイントを原資に、加盟店に送客するモデルだ。
例えば、dカードは2021年4月にdカード GOLDの会員数が800万を突破としている。
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dカード GOLDは年会費1.1万円(税込み)だが、ドコモやドコモ光の料金の10%のdポイントを獲得でき、1万円程度の料金を支払っている場合、毎月1,000ポイント程度獲得できる。年間1.2万円分のdポイントとなり、年会費以上におトクだ。
毎月1,000ポイント以上獲得している人が800万人いると考えると、毎月80億円分がdカード GOLDで発行されている事になる。以前、PayPayが100億円あげちゃうキャンペーンを実施したことがあるが、dポイントの場合は、毎月80億円あげちゃうキャンペーンを実施しているようなものだ。
月間80億円分のdポイントは、dカード GOLDで発行されていると考えられる最低ポイント数と思われるため、実際はもっと発行額は多いだろう。
この大量のポイントを加盟店に送りますと言われれば加盟店も検討するはずだ。大戸屋はPontaポイントから楽天ポイントに、ドトールはTポイントからdポイントに変更したのも、ポイント原資の違いが大きいのではないだろうか。
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2020年にPontaポイントがauと組んだことで、加盟店に送客するための原資を確保。auによるキャンペーンでPontaは盛り返しつつある。
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PayPayポイントの原資はどこから?
では、TポイントとわかれたPayPayポイントはどうなのか。「100億円あげちゃうキャンペーン」などで高還元で加盟店に送客し、2021年に発行したポイント数は公表していないが、楽天ポイントに次ぐポイントを発行しているようだ。
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個人的に、このポイント原資がどこなのかが気になっていた。おそらく、「マイナポイント」での最大2万円分のポイントや「あなたのまちを応援プロジェクト」で、対象自治体でPayPayを利用すると、20%や30%などのポイントを発行しており、これらのポイントが大きいのではないだろうか。つまり、PayPayポイントの大量のポイント原資は政府や自治体だ。
しかし、「マイナポイント」は期限が決まっており(毎回延長しているが)、「あなたのまちを応援プロジェクト」は、コロナが落ち着くと実施する自治体は減るだろう。コロナで地元の商店街などを救済するために、自治体が税金を使ってキャンペーンを実施しているため、消費活動が戻ればキャンペーンを続ける必要はない。
PayPayポイントが楽天ポイントを超えるには、マイナポイントの終了や、コロナが収束した後のポイント原資が必要となる。これを確保するための方針が、「PayPay商品券」であったり「PayPayカード ゴールド」「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」ではないかと考えている。
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PayPay商品券は、ふるさと納税で獲得できる電子商品券だ。直接PayPayポイントがたまるわけではないが、利用時にはPayPayポイントがたまるだろう。これは、「あなたのまちを応援プロジェクト」で自治体とのつながりが功を奏した。
PayPayカード ゴールドでソフトバンクの料金を支払うと10%のPayPayポイントを獲得できるようになるなど、先ほど紹介したdカード GOLDと同じ仕組みとなる。
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先日発表のあったLINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージは、加盟店にポイント原資を負担してもらう仕組みではなく、メーカーにポイント原資を負担してもらう所が新しい仕組みだ。
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花王商品を対象加盟店でPayPay決済すると40%のポイントがたまるキャンペーンなどを実施してきたが、このキャンペーンの原資負担はメーカーとなる。ポイント発行企業にとっては、ポイントの負担もなく、キャンペーンに参加できるメリットがある。
PayPay側としては、共通ポイントのモデルでもある店舗負担ではなく、ポイント原資をメーカーに負担してもらうと、激しい共通ポイント競争にも参入する必要がない。むしろ、他の共通ポイントと共存することもできる。
例えば、ウエルシアではTカードを提示し、「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」参加メーカーのアサヒ飲料の商品をPayPayで購入すると、Tポイントはこれまで通りたまり、別途マイルがたまる。もちろん、PayPayでの決済時のポイントもたまる。
消費者の行動 | たまるポイント | ポイント原資 |
Tカード提示 | Tポイント | ウエルシア負担 |
PayPay決済 | PayPayポイント | ウエルシア負担(一部PayPay負担?) |
LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ | アサヒ飲料負担 |
「マイナポイント」や「あなたのまちを応援プロジェクト」で減るであろうPayPayポイント発行額を、さまざまな仕組みで確保し、さらに増やしていこうとしているのだろう。
個人的には、「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」とあるように、LINEとPayPayが同一グループをアピールしたいのであれば、LINEポイントとPayPayポイントを統合した方が良いと思っている。LINEポイントの発行額がどれくらいかはわからないが、PayPayポイント+LINEポイントで少しでもPayPayポイントの発行額は増えるはずだ。
今回の「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」の記者発表は、消費者側には伝わりにくい内容だと感じたが、ポイント経済圏などを考える時に、そのポイントがどこから出ているのかなどを考えるきっかけになったのではないか。