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ZホールディングスとLINEの経営統合でキャッシュレス決済はどうなる? キャッシュレス戦国時代到来

2012年のポイント再編と同じような事が起きる

2019年11月18日(月)にZホールディングスとLINEの経営統合に関する記者会見があった。筆者は、用事で参加する事ができなかったが、この統合を聞いて思い出したのがYahoo!ポイントを廃止してTポイントに統合すると発表した2012年6月の発表後の事だ。

当時、楽天市場に対抗するためにYahoo!ショッピングなどで貯まるポイントをTポイントに切り替え、ヤフー+CCC連合 vs 楽天という構図ができあがった。

ポイントの提携を見ていくと、この発表がどれほどインパクトがあるかわかるはずだ。Yahoo!ポイントとJAL、Pontaポイント陣営とそれぞれのライバル企業である楽天スーパーポイントとANA、Tポイント陣営があり、バランスを取っていたのが2012年6月の発表までの図となる。

JAL派のYahoo!ポイントとANA派のTポイントがくっつく事により、一気にポイント業界の再編が進む。

まず、そのまま提携した場合は、Tポイントを介してANAとJALのマイルを相互交換できるようになる。そのためにYahoo!ポイントとJALの提携が解除。続いて、nanacoポイントとTポイントも相互交換できるようになるため、これも解除となる。セブン-イレブンで貯めたnanacoポイントをライバルであるファミリーマートでTポイントとして使われる可能性があるためだ。nanacoポイントが行き場を失うため、ANAとの提携となった。

さらに再編が進み、2014年4月にドコモがANAとのマイル提携を解除し、JALとの相互交換を開始。5月にはauがauポイントからau WALLETポイントに切り替える。7月にはソフトバンクがソフトバンクポイントを廃止し、Tポイントに統合した。7月末にはリクルートとPontaポイントが提携し相互交換を開始。従来はTポイント vs Pontaポイントという構図だったが、CCCとヤフーの提携で、楽天 vs ヤフー+CCC+ソフトバンクという構図に切り替わったためだろう。ネットに弱いPontaがリクルートと繋がるのはわかりやすい提携だ。

2014年10月には楽天が楽天ポイントカード(開始当初はRポイントカード)を発行し、ネット+リアルのポイント経済圏を開始した。これで、楽天 vs CCC+ヤフー+ソフトバンク vs リクルート+ロイヤリティ マーケティングとなる。

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2015年12月にはドコモがdポイントを開始し、共通ポイントビジネスに参入。

2016年2月にはJR東日本のグループ共通ポイントであるJRE POINTが誕生。駅ビル同士のポイントカードを統合しただけだが、後にSuicaポイントとビューサンクスポイントも統合している。3月にLINE Payカードが開始しLINEポイントが貯まるようになった。4月には関西地区の共通ポイントであるSポイントが開始し、6月からはイオングループの共通ポイントWAON POINTが開始した。

ペイメント事業でも大きな再編が起きる

たった1つの提携発表でこれだけの再編が進んだヤフーとCCCの提携だが、ZホールディングスとLINEの経営統合は同じような事が起きるのではないだろうか。

まず、LINEとメルカリが立ち上げたMobile Payment Alliance(MoPA)だ。こちらは、それぞれのQRコードを、それぞれのアプリで決済できるようにするアライアンスとなり、例えば、メルペイ加盟店のQRコードをLINE Payで読み取り、支払う事ができるようになる仕組みだ。

この仕組みに、ドコモのd払い、KDDIのau PAYも参画。このアライアンスに入っていない大きなスマホ決済サービスを見ると、PayPay、楽天ペイ(アプリ決済)がある。楽天ペイ(アプリ決済)はau PAYと提携しているため、このアライアンスはPayPayに対抗するためと考えられる。

2012年のYahoo!ポイントを廃止しTポイントに切り替えという発表と同じように、PayPay包囲網として立ち上げたであろうMobile Payment Allianceの初期メンバーがPayPay側に入る事になるわけだ。うまくいくかどうかは別として、確実にペイメント業界の再編が起きていく。

PayPayやLINE Pay、Tポイントはどうなる?

CCCとヤフーの提携が最近になってうまくいかなくなっているのは、それぞれが同じようなサービスを立ち上げているためだろう。

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例えば、携帯としてはソフトバンク、ワイモバイル、トーンモバイルなどもあり、旅行サービスではYahoo!トラベルとTトラベルでどっちがおトクなのかをはっきり伝える事はできない。クレジットカードにしてもYahoo! JAPANカードやファミマTカード、Tカード プラスなどTポイントを貯めるカードがたくさんある。

一方、楽天の場合は楽天グループで一番おトクなのは楽天カードです、ドコモの場合は一番おトクなのはdカードですと言い切れる。他に選択肢がないためだ。やはり、自社で全てのサービスを行っている楽天とドコモは強いだろう。

今回、ZホールディングスにLINEが加わると、携帯にLINEモバイルが追加され、決済ではPayPayとLINE Payが競合。LINE PayとPayPayを統合したとしても、Mobile Payment Allianceはどうするのか。

さらに、TポイントとLINEポイントも気になるところだろう。Yahoo!ショッピングで貯まるポイントがLINEポイントに切り替わるかもしれない。TポイントからLINEポイントに切り替える場合は、今後発行する予定だったクレジットカードのVisa LINE Payカードは発行されない可能性もある。

もちろん、競合する全てのサービスを統合していくのであれば良いのだが、統合せずにそのまま別サービスとして継続する場合は、一度歯車が崩れるとTポイントとの連携のように一気に崩壊する可能性もある。

ZホールディングスとLINEは経営統合であり、ヤフーとCCCは業務提携と言う違いもあるため、前回と同じような事にはならないかもしれないが、やはり2012年のポイント再編成を思い出してしまう。

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菊地崇仁

2011年3月に株式会社ポイ探の代表取締役に就任。ポイントやマイルを中立の立場で語れる数少ない専門家として知られ、日経プラス1の「ポイント賢者への道」を2017年から長期連載中。年会費約120万円・約110枚のクレジットカードを保有・利用し、信用できる情報提供を目指している。

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