青と黄色のVポイントはクレカの勢力図を変えるのか? 2013年のYahoo!ポイントとTポイントの統合までのインパクトはなし

コラム 共通ポイント

青と黄色のVポイントはポイント経済圏の勢力図を変えられるのか? 10年前のあの出来事よりもインパクトなし

ちょうど10年前の2013年7月1日(月)にYahoo!ポイントが廃止され、Tポイントに統合された。共通ポイント最大の出来事だ。

10年後の2023年6月13日(火)に、今度は2024年春にはTポイントの名称が消滅し、Vポイントに統合されると発表があった。ロゴは現在のTポイントの青と黄色をベースに「T」から「V」に変更となる。

TポイントとVポイントが統合 名称は「Vポイント」に
TポイントとVポイントが統合 名称は「青と黄色のVポイント」に

SMBCグループとCCCグループは、2024年春にVポイントとTポイントを統合し新「Vポイント」を開始する。 新ポイント「Vポイント」は、TポイントとVポイントが一緒になり、名称はVポイントに統合し、 ...

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共通ポイントの歴史を見ていこう。

共通ポイントのTポイントが誕生したのが2003年10月。TSUTAYAの会員証をローソンやENEOSで提示するとTポイントがたまるサービスを開始した。その後、2010年3月にPontaポイントが開始。当時は加盟店との契約が排他契約となっており、Tポイントの加盟店とPontaポイントの加盟店が被ることはなかった。Tポイント vs Pontaポイントと比較するニュースなどが増加し、ポイントブームの到来となる。

業種 Tポイント Pontaポイント
レンタルビデオ TSUTAYA GEO
コンビニ ファミリーマート、スリーエフ ローソン
ファストフード ロッテリア KFC
ガソリンスタンド ENEOS 昭和シェル石油

一度ポイントブームは落ち着くが、2012年6月にYahoo!ポイントを廃止しTポイントに統合すると発表があり、ポイント業界に激震が走る。

2013年7月にYahoo!ポイントが廃止されTポイントに統合。さらにソフトバンクがソフトバンクポイントを廃止しTポイントに切り替えた。2014年10月にオンラインショッピングモールを運営する楽天グループがネットのポイントを実店舗で利用できる楽天ポイントカードを開始する。2015年12月にはドコモがdポイントカードを開始し、現在の4大共通ポイントの誕生だ。

楽天ポイントやdポイントは圧倒的なポイント発行数で加盟店への送客を開始し、オセロゲームのようにTポイントやPontaポイントの加盟店がひっくり返っていった。例えば大戸屋は2019年4月にPontaポイントから楽天ポイントに、同年6月にドトールがTポイントからdポイントに切り替えた。

劣勢になっていたPontaポイントは2020年5月にauのポイントと統合。Pontaポイントはauの資金力で一気に巻き返しを図る。

現在、Tポイントがひとり負けとなっているのは、楽天ポイントやdポイント、Pontaポイントのように、大量にポイントを発行する原資がないためだ。頼みの綱のソフトバンクやヤフーは2022年4月以降、Tポイントの付与を終了し、グループのPayPayポイントを採用した。PayPayポイントは、2022年度に6000億規模のポイントを発行するなど、一気に巨大なポイント経済圏を作りあげた。

ポイント業界を大きく動かしたTポイントだったが、ネット(Yahoo!ポイント)とリアル(Tポイント)の統合による巨大ポイントプログラムを誕生させなければ、楽天がリアルでポイントを使えるサービスを開始する事もなかったかもしれないし、ケータイキャリアのポイントが共通ポイント化することもなかったかもしれない。

ヤフーとソフトバンク、Tポイント連合の同盟はちょうど10年で終了し、ヤフーやソフトバンクはPayPayポイント経済圏で一気にNo.1を狙う。一方のTポイントは周りがどんどん巨大化していく中で孤立した。

後がないTポイントが新たな提携先として選んだのがVポイントとなる。Vポイントは2020年6月に誕生した三井住友グループのポイントプログラムだ。三井住友銀行と三井住友カードのポイントが共通化し、2022年2月にはプロミス、2023年4月にはSMBC日興証券とグループ企業もVポイントを採用。

2023年3月には三井住友銀行と三井住友カードなどでOliveを開始し、対象のコンビニや飲食店で支払うと最大17%のVポイントを獲得できるサービスを開始した。メガバンク系による新たなポイント経済圏の誕生となる。

VポイントはCMなども行っているが、VポイントにはTポイントほどの知名度はない。原資のないTポイントと知名度のないVポイント - 両社の弱みを補う提携が新「Vポイント」だ。

ニュースなどではVポイントとTポイントの統合が大きく取り上げられているが、ポイント業界全体ではどの程度のインパクトがあるのか。

個人的には2013年7月のYahoo!ポイント廃止、Tポイントへの統合ほどのインパクトはないと感じている。ネットの大手ポイント(Yahoo!ポイント)とリアルの最大手ポイント(Tポイント)が一気に頂点を目指す攻めの提携だった。しかし、今回のVポイントとTポイントの統合は弱みを補う提携だ。

では、新「Vポイント」はポイント業界の勢力図を変えられるポテンシャルはあるのだろうか。

これまでのポイント経済圏はドコモのdポイント、auのPontaポイント、ソフトバンクのPayPayポイント(たまるポイントはソフトバンクポイントだがPayPayポイントに交換可能)、楽天モバイルの楽天ポイントとケータイキャリアを中心とした経済圏となる。

ケータイキャリアのポイントは契約者であれば自動的にたまるため、消費者はこれらのポイントに接する機会も多い。意識しなくてもポイントがたまっていれば、消費者はそのポイントを使うだけだ。おトクと感じれば、さらにポイントをためようとする。さらに、さまざまなサービスでポイントをためられ、豊富な資金力でポイントがたまるキャンペーンも多いのがケータイキャリアのポイントとなる。

新「Vポイント」も自動的にポイントが”たまる”状態を作ることができれば、ケータイキャリア中心のポイント経済圏と十分に戦うことはできる。

新Vポイントには銀行窓口があるのも大きいだろう。筆者は既に保有していた三井住友銀行の口座をOliveに切り替えようと思ったが、銀行アカウントに携帯電話番号を登録しておらず途中で申し込みがとまってしまった。オンラインで携帯電話番号を登録しようとしても本人確認なども含めると数日かかる。しかし、銀行の窓口に行くとすぐに銀行側の端末で携帯電話番号を登録する事ができ、Oliveの申し込みが完了した。

ケータイキャリアにも窓口はあるが待ち時間が長い。ネットで電話番号を探すだけでも時間がかかり、見つけたとしても電話がつながらない。銀行窓口をサポートとしてうまく利用できると、他のポイント経済圏に取り込まれていない層も一気に取り込める可能性もあるだろう。

新「Vポイント」が新たなポイント経済圏として成功すれば、他業種のポイント経済圏参入の足がかりになりそうだ。

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菊地崇仁

2011年3月に株式会社ポイ探の代表取締役に就任。ポイントやマイルを中立の立場で語れる数少ない専門家として知られ、日経プラス1の「ポイント賢者への道」を2017年から長期連載中。年会費約120万円・約110枚のクレジットカードを保有・利用し、信用できる情報提供を目指している。

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