専門家が分析:エムットは成功するか? Vポイント経済圏との“決定的な差”とは(菊地崇仁)

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専門家が分析:エムットは成功するか? Vポイント経済圏との“決定的な差”とは(菊地崇仁)

三菱UFJフィナンシャル・グループが発表した「エムット」。正直、ポイントマニアの世界では話題になっていると思われるが、一般的なニュースサイトでの取り上げ方は少ないと感じている。

例えば、筆者が先日出演した「DayDay.」では「VポイントとPayPayポイントの相互交換」を解説したが、「エムット」について触れることはなかった。

この違いは何なのだろうか。

三井住友カードやOliveのVポイントも苦戦していた

最近は、Vポイントを取り上げるメディアも多いのだが、実は開始当初はそれほど認知されていなかった。Vポイントは2020年6月1日(月)に三井住友銀行と三井住友カードのポイントが統合されたのがはじまりだ。

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さらに、対象コンビニで最大5%還元特典を追加したのは2021年2月1日(月)とかなり古くから特定加盟店での高還元サービスを開始している。

三井住友カード、ナンバーレスカードを発行 コンビニなどでの還元率は最大5.0%に
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2020年1月~2025年6月まで、Googleトレンドで「Vポイント」がどのくらい検索されているのかを調べると以下のようになる。

Googleトレンドで「Vポイント」の検索結果

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100%のピークになっているのは2024年4月22日(月)のTポイントとVポイントの発表時期。それ以降は、安定した検索率になっている。

つまり、銀行・クレカのポイントだけでは伸び悩み、知名度抜群のTポイントと統合してから勢いが増したことがわかる。

エムットが取るべき戦略とは?

これらを考えると、エムットが一般紙やテレビなどで取り上げられない理由は、銀行・クレカのポイントで、開始当初のVポイントと同じような状態だからだろう。

従って、エムットポイントが誕生したとしても、三菱UFJフィナンシャル・グループだけでどこまで伸ばせるかは未知数であり、やはり知名度のあるポイントとの連携が必要になるのではないだろうか。

考えられるポイントはPontaポイントが筆頭だ。ロイヤリティ マーケティングの株主構成を見ると、三菱UFJ銀行が5%の株を保有しており、出資比率を高めてPontaポイントが直接たまるサービスでも良かったはずだ。

ロイヤリティ マーケティングの株主構成

ロイヤリティ マーケティングの株主構成

auはPontaポイントを採用する前、au WALLETポイントを発行していた。au WALLETポイントはau WALLETプリペイドカード(現在のau PAYプリペイドカード)にチャージすることで世界中のMastercard加盟店で利用できると言うのが売りだった。

プリペイド式電子マネー、au WALLETが2014年5月21日から開始

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しかし、結局au WALLETポイントをやめ、Pontaポイントを採用することになった。

au WALLETポイントとPontaポイントが統合! ID連携するとau WALLETポイントがPontaポイントに

2020年5月21日(木)に、au WALLETポイントがPontaポイントに統合となった。auIDとPontaカード情報を連携することで、今まで貯めたau WALLETポイントをPontaポイントと ...

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おそらく、ドコモやソフトバンクと対抗するには、独自のポイントではなく、知名度が高く・使い勝手の良い共通ポイントを採用した方が良いと判断したのだろう。

今回のエムットポイント(現在はグローバルポイント)は、グローバルポイントWalletにチャージすれば、世界中のVisa加盟店で利用できる、今後はエムットポイントをCOIN+にチャージすれば現金化もできると言う売りだが、auの初期の戦略と一致する。

これらの経緯を考えると、「エムットポイント」を新たに発行し、大きくしていくよりは、既にある強力なポイントが直接たまる仕組みを用意した方が消費者に浸透させやすかったはずだ。

思っているよりも、Vポイント(Olive)陣営の方がはるか先を行っており、これを追いかけるのは三菱グループであってもかなり難しいのではないかと感じている。

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菊地崇仁

2011年3月に株式会社ポイ探の代表取締役に就任。ポイントやマイルを中立の立場で語れる数少ない専門家として知られ、日経プラス1の「ポイント賢者への道」を2017年から長期連載中。年会費約120万円・約110枚のクレジットカードを保有・利用し、信用できる情報提供を目指している。

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