PayPayポイントとVポイントがまた提携? Tポイントの時には物別れ(菊地崇仁)

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PayPayポイントとVポイントが提携? ポイント経済圏にどんな影響がある?(菊地崇仁)

さまざまなメディアで、VポイントとPayPayポイントの相互交換が可能になると報じられ、話題になっている。

日本経済新聞社によると、OliveとPayPayのスマホ決済を接続し、Oliveを使ってVisaの加盟店で決済する際に、クレジットカード、デビットカード、ポイント払いに加えてPayPay残高払いを選べるようにするとのこと。また、VポイントとPayPayポイントを相互交換できるようにするという。

もし、この報道が正しければ、今後のポイント経済圏争いにどのような影響があるのかを考えてみたい。

PayPayポイントは2022年度に6000億円相当のポイントを発行し、同期間の楽天ポイント発行額は6400億円相当。Vポイント+PayPayポイントを合わせると、楽天ポイントの発行額も超えてきそうで、ポイント経済圏争いも大きく変わりそうだ。

Vポイント、Pontaポイント、楽天ポイント、dポイント、PayPayポイントの5大ポイントを比較すると、以下のようになる。

Vポイント Pontaポイント 楽天ポイント dポイント PayPayポイント
携帯 トーンモバイル※1 au 楽天モバイル ドコモ ソフトバンク
クレジットカード 三井住友カード au PAYカード 楽天カード dカード PayPayカード
コード決済 au PAY 楽天ペイ d払い PayPay
銀行 三井住友銀行 auじぶん銀行、
ローソン銀行
楽天銀行 dスマートバンク※2 PayPay銀行
証券 SBI証券 三菱UFJ eスマート証券 楽天証券 マネックス証券 PayPay証券
EC au PAYマーケット 楽天市場 Amazon Yahoo!ショッピング

※1 MVNO  ※2 BaaS

dポイントは弱みだった証券、ECは買収や提携などして徐々に強化してきた。残る弱みは銀行だろう。

Vポイントの弱みは携帯、コード決済、ECだ。コード決済については、タッチ決済に集中しているため、Vポイント陣営が新たなコード決済には参入しないと考えてきたが、ここをPayPayとの提携で埋めてきたことになる。

VポイントとPayPayポイントの相互交換により、弱点だったECと携帯分野も克服することになる。

一方、スマホのタッチ決済を利用することで対象飲食店やコンビニで7%還元される特典は強力で、これらをよく利用するならVポイント経済圏を確実に抑えておきたいところだ。

この対象飲食店、コンビニでの高還元については、他の経済圏が入り込めていない分野であるため、Vポイントの位置づけとしては、最強のサブ経済圏として、他の経済圏と併用して使うのがおすすめだった。

今回、PayPayポイントが最強のサブ経済圏のVポイントと提携したことで、メイン+サブでの最強経済圏を作り上げることができそうで、ポイント経済圏争いではかなり優位に立つだろう。

しかし、懸念点もある。

元々、Vポイントは2024年4月22日(月)にTポイントと統合し、「新Vポイント」になっている。

このTポイントの歴史を見ていくと、2013年7月1日(月)にYahoo!ポイントが廃止し、Tポイントに統合。その後、2014年7月1日(月)よりソフトバンクポイントからTポイントに切り替え、Tポイント+ヤフー+ソフトバンク連合ができあがった。

以降、楽天やドコモ、auなどが大きく動き、ヤフーやソフトバンクが同グループのPayPayポイントを採用した事でTポイント+ヤフー+ソフトバンク連合は崩壊。Tポイントはひとり負け状態になった。

楽天ポイント、dポイント、PayPayポイント、Pontaポイントは、大量にポイントを発行し、そのポイントで加盟店に送客を行っており、ポイント原資のないTポイントは勝ち目がない。

そのTポイントと統合したのがVポイントだ。VポイントはTポイントの知名度を手に入れ、Tポイントは三井住友カードなどのスマホのタッチ決済による7%還元などでのポイント原資を手に入れた。

ポイントの歴史から見るポイント経済圏の変貌 ポイント専門家が解説(菊地崇仁)
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いよいよ2024年4月22日(月)にTポイントとVポイントが統合する。 筆者も、コラムではポイントの歴史を紹介することも多いのだが、あらためてTポイントとVポイント統合までの道のりを紹介したい。 共通 ...

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楽天ポイント、dポイント、Pontaポイント、PayPayポイントが一歩リードしていたが、Vポイントが復活して、現在は5大ポイントと呼ばれるようになっている。

つまり、一度Vポイント(旧Tポイント)はヤフー+ソフトバンクとタッグを組んでいたのだが、現在は別々の道を進んでいるわけだ。

なぜ、Tポイント+ヤフー+ソフトバンク連合が崩壊したのか。1つ目はソフトバンクやヤフーがグループのPayPayポイントを活用した方がメリットがあると判断したためだろう。2つ目は、同じようなサービスがあり、消費者向けにどのサービスを利用すればおトクなのかをアピールできなかった点だと考えている。

例えば、TポイントがたまるクレカはファミマTカードやTカード プライム、Yahoo! JAPANカードなどがあり、どのカードを利用すれば一番おトクなのか消費者にはわかりにくかった。TトラベルやYahoo!トラベルなども同じで、どちらを使えばおトクなのかを判断するのが難しかった。

似たようなサービスを運営・開始するなど、消費者を混乱させてしまったのがTポイント+ヤフー+ソフトバンク連合の失敗だと考えている。

今回のVポイントとPayPayポイントも同様、銀行やクレカ、証券などはサービスを補完するような関係になく、完全にライバル関係になっている。

ただし、今回の提携はポイントの統合ではなく、ポイント交換の提携で終わりそうであるため、前回と同じ事にはならないとは思うのだが、それぞれのライバル関係のサービスが多いのは不安が残る。

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菊地崇仁

2011年3月に株式会社ポイ探の代表取締役に就任。ポイントやマイルを中立の立場で語れる数少ない専門家として知られ、日経プラス1の「ポイント賢者への道」を2017年から長期連載中。年会費約120万円・約110枚のクレジットカードを保有・利用し、信用できる情報提供を目指している。

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