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ポイントは誰のものなのか?

2014年4月18日

2014年4月、消費税が5%から8%にアップした。それに伴い、年間1?1.5兆円発行されていると言われるポイントに注目が集まっている。注目しているのは消費者だけではない。最近はこのポイントを狙った犯罪が起きているのだ。

2014年2月3日、JALのサイトで大量の不正ログインが行われ、同社利用者のマイルが不正にAmazonギフト券に交換される事件が起きた。また、3月28日、JCBカード会員専用のWebサービス「My JCB」に不正ログインがあり、Tポイントへの不正ポイント交換が確認された。被害人数は数百人程度だが、これらは全てポイント発行企業が不正交換分のポイントを補填している。

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大阪府在住の斉藤(仮名)さんは、数年前から家族で旅行に行くために日々の買い物でマイルを貯めている。通常のショッピングでは航空系のクレジットカードや電子マネーを活用。また、オンラインショッピングや新規クレジットカードの申し込みの際は、ポイントサイト(※)を利用し、貯めたポイントをマイレージに交換している。全てをマイルに交換することで、年間20万マイルを貯めるポイント長者だ。昨年は貯めたマイルで、北海道旅行、香港旅行を楽しんだ。

4月4日、斉藤さんは日課である「Myポイ探」でのポイント残高チェックを行っている時に異変に気がついた。利用しているポイントサイト「ポイントゲッツ(仮)」だけポイント情報が取得できない。そこで、直接ポイントゲッツにログインしようと試みたが、何度やってもログインに失敗する。

斉藤さんは不安に思い、ポイントゲッツに問い合わせ、ログインできないことを伝えた。程なくして返信があり、メールアドレスが第三者に変更されていたことを知った。そのメールには以下のように書かれていた。

『お客様のご登録情報が不正に変更されており、直後にAmazonギフト券へ50,000ポイントの特典交換申請がされております。早急にパスワード変更を行っていただきますようお願いいたします。』

斉藤さんの不安は的中した。第三者に5万円分のポイントが不正に交換されてしまったのだ。

しかし、ポイントゲッツからはポイントの補償などについては書かれておらず、斉藤さんが直接警察に被害届を出し、自分で解決して下さいとの事だった。

斉藤さんは地元の警察署に行き、事情を説明する。しかし、そこで思わぬ事を言われた。

『今回の被害者は斉藤さんではありません。被害者はポイントゲッツとなります。
そのため、被害届を出すのはポイントゲッツですので、斉藤さんが被害届を出すのは難しいでしょう。』

結局、被害届を出せずに帰宅。
知り合いの弁護士に相談し、ポイントゲッツに内容証明郵便を送った。まだポイントゲッツとの交渉は続いている。

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ポイントは一体誰のものなのだろうか?

冒頭での不正ポイント交換の場合は、ポイント発行企業がポイントの補填を行った。ポイントを受け取っている利用者にとっては、当然の対応だろう。

しかし、不正アクセスによる不正ポイント交換が行われた場合、適応されるのは不正アクセス禁止法違反または窃盗罪となる。不正アクセスされ、ポイントを盗まれたのは、あくまでもポイント発行企業というのが警察の考えだ。そのため、ポイント発行企業が被害届を出さなければ捜査は開始されないのである。

実際のポイント被害者であるはずの斉藤さんは被害届を出すことができず、ポイント発行企業と弁護士を交えた交渉をするしかない。消費者のポイントを保護する法律はなく、交渉にはお金も時間もかかる。多くの場合は、泣き寝入りするしかないだろう。最近のインターネット犯罪に対する法整備が追いついてないために起きた事件だ。

斉藤さんは『日頃からパスワードを頻繁に変更したり、即時交換のあるサイトにはポイントを多く置かないことが、被害防止の一番の方法だと実感しています』と語った。ポイントの保護に関する法整備が必要となるだろう。

※ポイントサイト
サイト内に掲載されている広告をクリックしたり、広告から商品を購入することでポイントを獲得できるサイト。獲得したポイントは他社のポイントや電子マネー、現金に交換することができる。


※不正アクセスの被害者に直接話しを聞きたいという記者の方はお問い合わせからご連絡下さい。

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菊地崇仁

2011年3月に株式会社ポイ探の代表取締役に就任。ポイントやマイルを中立の立場で語れる数少ない専門家として知られ、日経プラス1の「ポイント賢者への道」を2017年から長期連載中。年会費約120万円・約110枚のクレジットカードを保有・利用し、信用できる情報提供を目指している。

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